第43回日本手術医学会総会　会長 南　正人（大阪大学医学部附属病院手術部　部長）

　この度、第43回日本手術医学会を大阪にて開催させて頂くこととなりました。伝統ある本学会の歴史に歩みを刻む機会を頂戴したことは大変な光栄であります。手術医学を築いてこられた多くの先輩の足下にも及びませんが、今なりの目線で記憶と心に残る総会になりますよう努めて参りたいと存じます。
　テーマを｢求められる手術室を極めて｣とさせて頂きました。手術治療が必要な患者さんに最善の手術を提供するには術者の技術が必須であることは言うまでもありません。しかし手術に関わる麻酔科医、看護師、技師などのチームプレーが、良質な手術室環境の中で存分に発揮されてこそ、はじめて患者さんの求めに十分に応じることが可能になります。これが「患者さんから求められる手術室」のありかたです。同時に欠かせないことは、チームメンバーが安全に快適に働けるということです。すなわち「職員から求められる手術室」であることも極めて重要であり、当然のことながらその効能は患者さんにも大きく及びます。手術医療に関わる実践的学問といえる手術医学を、自然科学や社会科学と融合して日々たゆまず地道に進化させ、「求められる手術室を極めて」ゆくことが私たちの責務と考えます。
　新型コロナウイルス感染の蔓延によって、すっかり世界の見え方が変わって参りました。ワクチンに期待がかけられていますが、まだまだ｢先｣の見えない現況です。｢先｣とは、元の世界に戻ることではなく、新しい世界への順応であると考えます。医療者は率先して順応し、新型コロナウイルスに対応すると同時に、あるべき医療を維持しようと努めています。手術室で働く皆様におかれましても、必要とされる手術医療をなんとか十分な形で届けられるように日々ご尽力のことと存じます。このような逆境ではありますが、ある意味で手術医療のあるべき姿をあらためて見直す機会なのかとも考え、その気持ちもテーマに込めました。
　さる12月の第42回手術医学会総会は英断と工夫をもって高松で現地開催されました。それに勇気をいただき、第43回も大阪に集って語れる現地開催をめざしております。会員の皆様にとって大いに有意義な大会としたく考えます。是非とも多数の皆様のご参加を賜りますようお願い申し上げます。