米国の臨床試験学会にあたるSociety of Clinical Trials (SCT)は1978年に設立され、臨床試験に関わる方法論やプラクティスの発展を目指した国際的な学術団体としての歩みを進めてきた。毎年開催されるSCTの学術集会の目玉となっているのが、”Trial of the Year”という、1年間に最も世の中にインパクトを与えたランダム化比較試験に対するAward presentationである。2023年度のTrial of the Yearは、The Chronic Hypertension and Pregnancy (CHAP) Trial (Tita AT, et al. N Engl J Med 2022; 386:1781-92)であった。SCTからは2年前の会長である生物統計家のDr. Susan Halabiを招聘し、Trial of the Yearの内容と選出理由を紹介いただくとともに、日本語での解説も加える。Dr. Halabiはがん領域のプラットフォーム試験として有名なTAPUR試験の責任統計家であり、バイオマーカーを有する対象に対する臨床試験の実例についても解説いただく。
限りあるリソースを有効に活用し、高品質な臨床研究支援を行うためには、QbDの概念を取り入れたプロトコル作成が必須である。
そのためには、多職種の研究支援者が協調し、実効性と品質が担保されたプロトコルを効率的に作成するために必要な「業務プロセス」を理解することが重要である。また、そのプロセスを多職種で実装する上で有用なツールを使用することが有益である。
我々は、ツールとして、業務フロー、フルプロトコル作成までの各プロセスで必要となる各種フォーマットを作成した。
プロトコル作成において、多職種の研究支援者が担うプロセスを理解すること、そのプロセスを多職種で実装する上で有用なツールを体感することを目的とする。
AMEDのPM/StM育成に関する研究班ではこれまで、適切に臨床研究をマネジメントできる人材が育成され、質的、量的に確保されることを目的とし、育成カリキュラム、評価指標、職能要件リスト、業務リスト等を作成してきた。本セッションではAROにおいてPM/StMの育成に携わっている方や関心がある方を対象に、AMED研究班で作成した育成関連ツールの説明とその活用事例を紹介する。さらに、グループディスカッションを展開し、AMED研究班で作成した職能要件や業務リストを題材に、参加者のPM/StM育成の取り組みを共有し、また、どのような育成プログラムが望まれるか、何ができるか、どうしたらよいかを考える。
AMED令和5年度研究開発推進ネットワーク事業「地域、疾患領域、臨床研究者・支援専門職ネットワークを活用した、QMSの概念に関する研究者及び研究支援者への教育研修に係る研究(23yk0126027h0001)」研究班は、研究者主導臨床研究や医師主導治験におけるQMSの概念(QbDやRBAを含む)に関する教育研修や理解度向上に取り組んでいる。令和5年度は、①『個別の臨床試験』でのQbDやRBAの実装による質向上活動、②『体制としてのQMS』での個別臨床試験の最適化や臨床研究支援組織のあり方について議論し、成果物となる教育資材や理解度調査結果等を作成した。
本セッションでは、上記の成果物をご紹介し、より良い活用方法を、参加者の皆さんと一緒に考えたい。
データ収集の際に発生するクエリ。その捉え方に関して、施設担当者、CRA、データマネジャーの間で見解の相違が起こる場合がある。それぞれの立場で、どのような観点からデータを見るかによってもその捉え方が異なることも考える。施設担当者とCRA間、CRAとデータマネジャー間ではコミュニケーションを取っていても、三者が一堂に会して、この問題に向き合う機会はあまり多くない。そこで今回、三者三様の観点をお互い少しでも知ることで、この先のクエリ対応をよりスムーズに行い、質の高いデータを効率よく収集できる一助としたい。
ICH-E8(R1)にQMSの概念が導入されて以降、Quality by DesignやRisk-Based approachを用いたプロトコル等の作成、実施や品質マネジメントが求められ、医薬品開発目的では様々な手法が公表されている。一方で多様な組織及び目的で実施される研究者主導臨床研究へのQMSの導入は治験での導入よりも難易度が高い。本セッションでは、研究者主導臨床研究へのQMS導入時の問題点及びその解決策について、参加者同士がチャッティングにて意見交換する。
医薬品開発の世界では、グローバル開発が主流になる中、日本での治験ばなれが深刻な課題になっています。このワークショップでは、日本の医薬品開発のあるべき未来や役割について、演者及び参加者全員で本音で語り合い、産・官・学といった立場や、所属している組織の実情等を一旦離れ、参加した全員が明日への気付きと原動力を得ることができる双方向型のインタラクティブなワークショップを目指します。例えば、その計画や試験デザインは日本で実際に薬を使う人の為に十分に考え抜かれたものだろうか。国内外のステークホルダーに対し、依頼者又は実施者となる我々はしっかりと議論し、試験計画の最終決定者に提案を行っているだろうか、など、私達が明日からできることを考えていきましょう。もっと日本を良くしたいと思う方ならどなたでも歓迎です。経歴や経験年数は問いません。希望溢れるワークショップを共に創り上げましょう。
ICH E8R1改訂では開かれた対話を支える文化の形成について明記され、計画段階からQbDを導入して言語や医療慣習の違いによるリスクと向き合うことが重要視されている。臨床試験を加速するためには仮想空間を利用したメタバースなど新たなコミュニケーション・テクノロジーの活用が鍵になると考えられる。このセッションでは参加者にもメタバース空間に参加いただき、活用アイデアや課題について共有する場としたい。
各種テクノロジーの進化により、臨床試験のデータソースが多種多様になってきている。いままでEDCにデータを集約させるような運用も多かったが、EDC外のデータの方が多い試験も出てきている。かつ、外部ツールも複数存在するような場合も発生する。そのような試験において、それらツールやデバイス類のマネジメント、そして肝心なデータのインテグリティを担保するマネジメントなど、多角的にマネジメントを考える必要がある。事例をもとに、これからのデータおよびデータソースのマネジメントを考えたい。
個人情報保護法の改正を受け、生命科学・医学系倫理指針も改正されたが、正しく理解し運用されることが重要と考え、日本臨床試験学会ではTask Force(以下、生命科学・医学系倫理指針TF)を立ち上げ検討を進めている。同学会での教育セミナー「第9回 倫理審査委員会を考える!」でも、生命科学・医学系倫理指針TFと連携し倫理審査委員会事務局・研究者・研究支援者、企業等を対象に個情法や倫理指針の運用や解釈に関し、課題の抽出や解決策の検討を行った。本セッションでは、CReP(倫理審査専門職)とのコラボセッションとして、JSCTR生命科学・医学系倫理指針TFと「第9回 倫理審査委員会を考える!」で抽出された課題や解決策、またCRePで議論されている課題等を参加者へ提示し、意見交換を行いたい。
※当該セッション参加により、CReP認定、JSCTRパスポート/エキスパート認定者への単位付与を予定しています(CReP認定ポイント付与には条件あり)。各認定保持者以外の参加も可能であり、活発な議論を期待しています。
OpenAI社が開発したchatGPTに代表される大規模言語モデル等の生成系AI技術による技術革新が生まれ始めている。それらはビジネスの現場にも活用されつつあり、仕事のやり方も変わりつつある。本セッションでは、医療・臨床試験の場において、どのように活用出来るようになるのか、未来の医療・臨床試験はどのようなものになるのかについて、医療・臨床試験の現場における最新のAIの活用の動向を通して、より理解を深めるものとしたい
臨床試験データを収集する手法のひとつとして、電子カルテからEDC等へのデータ連携が注目されている。これにより、医師・CRCによるデータの二重入力やCRAによるSDVが軽減され、試験コスト軽減への寄与が期待される。しかし、電子カルテの医療機関単位のカスタマイズや、活用できる形式でデータが記録されていない等の課題がある。本シンポジウムでは、医療情報交換標準規格の活用がもたらす臨床試験効率化の将来像について議論したい。
研究倫理審査委員会の運用や規制に関しては国際的な標準はなく、各国で制度を定めている。したがって、国ごとの制度や規制の違いに着目して各国の研究倫理審査委員会に関する背景や課題を参考にすることにより、日本の研究倫理審査に関する今後の議論に何らかの示唆を与えると考えられる。今回は米・仏・英における研究倫理審査委員会の調査をもとに、議論を行う。
臨床試験参加者の経験を医薬品開発計画に反映させることは、患者が参加しやすく、かつ質が確保された治験の実施等の「患者中心の医薬品開発」につながる。これまでLay Summaryや臨床試験参加者からの生の声を収集するアンケート調査等の様々な取り組みが行われてきた。本シンポジウムではこれまで行われてきた取り組みや活用事例を紹介するとともに患者さんの声を医薬品開発計画に活用するための収集方法及び活用方法について議論したい。
超急性期治療を対象とした臨床試験では、限られた治療可能時間内に効果的な治療介入を行うために、被験者から適時に適切な同意を得ることが大きな課題である。本シンポジウムでは、脳卒中超急性期や他の緊急領域での超急性期治療を対象とする臨床試験における同意の取得について、我が国における現状や、諸外国の取り組みを紹介し、適切な同意のあり方を検討する。
イベント発生までの時間を評価項目とする臨床試験では、ログランク検定、Cox比例ハザードモデル等の生存時間解析手法が伝統的に用いられてきた。これらの手法は、比例ハザード性が成り立っているときに最も性能が高いことが知られているが、現実の臨床試験においては、その仮定を満たさないケースが存在する。本シンポジウムでは、近年、この問題に対処するために議論されている新たな指標(Estimand)を紹介し、理解を深めることを目的とする。
GCP renovationを待たずとも「患者・市民の声を聴く」というフレーズを頻繁に耳にするようになった。それが真に意味することは何か。ニーズやナレッジには文書化することが難しい暗黙知の部分が多く存在する。文書にするとその大部分が失われることが多い。「誰ひとり取り残さない(leave no one behind)」ためには、形式知化するのが難しいこれらの情報、紙に書かれたものだけではない、潜在的な患者・市民の声も取りこぼさない検討が必要である。従来のフォーカス・グループを用いて情報を収集し、それを文書化して研究計画に役立てる手法は、今の要求に応えるのに不十分かもしれない。このシンポジウムでは、単に「患者のために」というアプローチではなく、「患者と共に臨床試験を創る」というこれからの視点を提示する。患者・市民と企業・研究者が一度きりの交流ではなく、持続的なコミュニケーションの場を形成するPPIエコシステムの重要性に焦点を当てる。さらに、最新の技術、特にAIやLLMを用いて、これら患者・市民のナラティブ・データをエビデンスとしてどのように有効活用するかを探求する。
改正GPSP省令では、「製造販売後データベース調査」や「使用成績比較調査」が新たに定義され、製造販売後調査が多様化する中、その取り扱いに各医療機関では苦慮している現状がある。特に近年では、学術目的での利用や公表を明記している調査が増え、患者からの同意を必須とするものも少なくない。このような状況について、現状の共有と今後の調査のあり方について考えたい。
臨床研究の適切な企画・運営・実施・管理には、各業務の専門的知識を有する臨床研究専門職の関与が必須である。しかし、研究実施機関の体制や個々の臨床研究の実施体制により、臨床研究専門職に求められる業務内容は異なる。日本臨床試験学会では、新たにスタディマネジャー、クリニカルデータマネジャー、モニタリング担当者の職種別検定・認定制度を検討しており、まずは検定制度から運用を開始するが、本シンポウムでは、日本の臨床研究専門職が置かれている環境も踏まえ、臨床研究専門職の検定・認定の意義について、議論したい。
難治患者に対する有用な治療薬が無い状況の開発においては、開発薬剤の有効性評価にあたり、難治患者を対象とした臨床試験において、症状スコア等を指標に、改善方向への変化量がプラセボよりも大きいことを示すことで十分な場合がある。
一方、既存薬が存在する状況においては、臨床的に意味のある改善を評価指標とした、いわゆるResponder rate等を用いて開発薬剤の有効性を説明することが望まれる場合も考えられる。
本シンポジウムでは、治験の立案、実施、評価に関わるそれぞれの立場から、将来的な評価指標や評価方法策定に係る忌憚のない意見を述べていただき、より有用な評価指標や評価方法の考え方について自由な意見交換を行いたい。
デジタル技術活用によるDCT実現に向けた取り組みが加速しており、患者さんへの試験参加機会の提供は治療の選択肢を増やし、被験者背景の多様性が広がることも期待されている。一方、DCTによりデータの流れは多様化/複雑化しており、データの品質/信頼性の確保は重要な課題である。本セッションではDCTにおけるデータの品質/信頼性確保に焦点を当て、規制面、技術面、運用面等の課題や留意点について議論したい。
近年、日本における臨床試験への患者市民参画 (PPI) の取り組みについて、さまざまな事例が共有され、議論が行われている。他方、患者や市民が経験しているPPIの状況や今後の期待、懸念について意見を交わす機会は、まだ十分とはいえない。本セッションでは、患者の視点や経験に着目したPPIのあり方やその課題、今後の期待について議論したい。
国内外において、リアルワールドデータ(RWD)を利活用した迅速な薬事申請を進めることが期待されている。
そのために、レジストリの利活用など、産官学が認識を一致させ、相互に協力していく必要性も高い。
本シンポジウムでは、医薬品開発の過程において、RWDを取り巻く法規制を整理するとともに、レジストリデータの活用事例などをご紹介する。
これらをきっかけに、今後RWDの利活用が、医薬品や医療機器の開発を促進する架け橋となることを期待する。
臨床試験業界では、多様な学部出身の人材が活躍している。しかし、何れの学部においても臨床試験に多くの時間が割かれず、その重要さや魅力が伝わりきっていない。そこで本学会の有志と学生が協働し、臨床試験業界にまつわる疑問や魅力を発信するセッションを企画した。本企画は、多くの学生に臨床試験の重要さと魅力を、そして学会員には学生の目に映る業界を知って頂き、今後の業界の発展に役立てていただくことを目的とする。
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)では、研究公正高度化モデル開発支援事業を実施し、基礎研究及び臨床研究の公正かつ適正な実施の確保を図るための研究開発を実施しています。本教育トラックでは、研究公正・研究倫理の考え方を紐付けて、臨床研究に従事する研究者等に求められる、研究デザインから解析、論文化に至る臨床研究技能について解説いたします。この講義を通じて、研究公正や研究倫理は臨床研究技能と不可分であるということを理解するとともに、臨床試験の倫理性・公正性の向上につながることを期待しています。
日本医療研究開発機構(AMED)では、医薬品等規制調和・評価研究事業において医療製品のレギュラトリーサイエンス研究を支援しています。臨床試験の原理・原則は今日でも変わらないものの、試験の合理化・効率化を目的にアダプティブデザイン、ベイズ流アプローチ、マスタープロトコル試験(バスケット試験,アンブレラ試験,プラットフォーム試験)の利用が広がりを見せています。本教育トラックでは、これらの新しい臨床試験方法論について、AMED医薬品等規制調和・評価研究事業におけるレギュラトリーサイエンス研究の成果も含めて解説します。
日本医療研究開発機構(AMED)では、研究公正推進事業において研究倫理教育の教材を作成しています。本教育トラックでは、AMED「研究公正に関するヒヤリ・ハット集」をもとに、研究公正に関する基本的な考え方を学ぶとともに、特に臨床試験等に関するヒヤリ・ハット事例について解説いたします。この講義を通じて、研究不正や不適切な行為の防止や回避につながり、医療研究開発の公正性が向上することを期待しています。